「文昇問題 其の一」

モデル・デビューの段

 

 人生で初めての経験をした。ファッションショーで、モデルをやったのです。
 場所は、リニューアルされたJR大阪駅の上にある時空の広場。夫婦で、船上パーティーに出席するという設定だ。午前中から色々なイベントがある中の一つで、他のイベントはすべてプロのモデルさんがやる。では、なぜ、モデル経験の無い、ド素人の私たち夫婦に白羽の矢が。先方に、趣旨を聞くと、プロのモデルさんでは、観ているお客さんが親近感を持ってくれない。「あんなんやったら、私たちでも着れるんちゃう!」と、思わせるモデルを探していた、との回答だった。
 嬉しいような、悲しいような、複雑な気持ちで、当日を迎えた。リハーサルをする時間がなく、ぶっつけ本番。プロのモデルさん達のステージが終わり、いよいよ私たちの出番がきた。司会の方の紹介の後、音楽が大音量で鳴り、真紅のドレスとシルバーのタキシード姿で、ステージに登場する。その後、腕を組んで、15m程のランウエイを颯爽と歩き、先端で止まってポーズ。ターンして、元のステージ上に戻り、振り向き、また、ポーズをする。このわずか15mのランウエイの長い事。ホンダのASIMOの様な歩き方だったと思う。
 「パリ・コレ」ならぬ、「なに、コレ!」でした。


                                          <2013年 2月>